スラム part74

やいち  2009-10-06投稿
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「賢ちゃーん!!急げ。あと30秒!!」

賢之助の動きが早くなる。今の両者のポイントは有効1つずつ。

時間はもう、残っていない。

賢之助の動きが一瞬止まった。
すかさず相手が技をかけにくる。

さすがに相手の井口は強い。
市瀬と同じ二年生だが、有名な選手で、副将をまかされている。

賢之助が技にかかりかける。
内股だ!!

相手が振り上げた足が賢之助の内腿を狙ってくる。

ヒュッ!!

井口の内股が空を切った。井口が一瞬、驚きの表情を見せる。

賢之助の内腿をとらえるはずの足が内腿にあたることなく、賢之助の横に振り上がっている。

内股すかし(内股でとらえられる足を抜き、逆に相手を投げる返し技)だ!!

「イッタァー!!!」
本山柔道部全員が声を上げた。

井口が宙を舞い、畳に叩きつけられる。

バァン!!

「マジかよ。」
修二の口から言葉がもれた。

井口。
凄まじい選手だ。

審判の声はあがらない。
投げられた瞬間、きれいに投げられるはずの井口が体をひねり、かわした。

ポイント1つなかった。

「ビイィィー!!」
試合終了のブザー音。

引き分けだ。

「礼。」
両者、礼の済ませ、賢之助が戻ってきた。

「悪い。勝てなかった。」
賢之助が言った。
「つないでくれてありがとな。あとは…」
「修二にまかせた!!」
悠が修二のセリフを奪った。

「俺のセリフだろ!とるなよ!んじゃ、行くわ。」
そう言って修二は試合畳に向かった。

これで決着だ。

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