知ってるよ。
あなたの視線の先。
でも、あなた知らないでしょ。
あたしの、視線の先には
いつだってあなたがいるんだよ。
―――…?…―――\r
昨日はよく眠れなかった。
早朝5時。
あたしはいつものように、むくりとベッドから起き上がって
5分間考え事をする。
『…ゆうた…昨日なんであんなこと聞いてきたんだろ…』
ふぁあ…とあくびをしながら昨日のことを振り替える。
そして寝惚けながら鈴木くんに言われたことを思い出した。
『今日…だよね…!!』
不安と期待が3:1くらいになってるあたしの心臓は、家をでた瞬間にものすごい早さで高鳴りはじめた。
『朝からなんでこんなに緊張しなきゃなんないのよ…!!』
ぶつぶつと文句を言いつつも、あたしは髪にいつもはつけないヘアコロンなんかをつけてきたりなんかして
準備は万端に整えてきた。
『備えあれば憂いなし!』
ちょっと大きい声で言ってみた瞬間。
『わっ!』
と大きな声が後ろから聞こえた。
『びゃぁ!』
あたしはよくわからない叫び声と一緒に後ろを振り替えってみた。
『…ぷっ…っアハハハッ!沢木ナイスリアクション!』
鈴木くんが、お腹をかかえて笑ってる。
これは朝の幻?
『すずきくん…?』
『あははッ…あーごめんごめん。沢木があんまり可愛い反応するもんだからさ。』
…朝から、幻聴まで聞こえてる。
『おはよう。』
鈴木くんは、笑ってた笑顔よりももっと眩しい笑顔をこっちに向けながら、いつものようにおはようと言った。
あたしはいつもの100倍緊張しながら、小さく挨拶した。
『…今日は泉先輩、一緒に行けないんだってさ。』
『えっ…なんで?』
『野球部の朝練の準備。』
『…あ、そっか。先輩マネージャーだもんね。』
泉先輩は、野球部のマネージャーを努めていて、
高校3年最後の試合に向けてはりきっている。
『鈴木くんは朝練出ないの?』
『今日は高3の先輩達だけの練習だからね。』
なるほど。
『泉先輩、甲子園行くぞー!とか言って張り切っちゃっててさ!』
『…ふーん。そうなんだ。』
先輩の話しをする鈴木くんの顔は、すごく楽しそう。
あたしはつまんないんですけど、鈴木くん。