「いや、本当に驚いたよな
あいつがあんなことするなんて
拓也、おまえすごいよ」
「俺は何もしてないよ」
俺らはゆかや卓也と別れ
病院の出口に向かっていた
「愛ちゃんにも
届くといいんですけどね」
ゆかの担当である
看護師の和田さんが
見送りに来てくれた
「今日はゆかちゃん、
とっても楽しそうで…
忙しいでしょうけど
彼女のために
また来てあげて下さいね」
俺にはゆかのことばかり
気にかかっていた
「あの…聞いてもいいですか?」
「ええ、何でしょう?」
「俺以外にゆかの見舞いに
来る人っていないんですか?」
俺の突然の質問に
和田さんは戸惑ったように
見えたが、やがて答えてくれた
「…ええ、もうずっと誰も
来ていません
たまに親戚の方が
いらっしゃるんですが…
あまり親しくないようで…」
「ご両親は?」
直人も深刻そうに
話に加わった
和田さんは首を振り
足元を見た
「お父さまは彼女の病気が
わかり少ししてから
家を出ていかれたそうです…
お母さまは…」
和田さんの表情が一段と
苦しげになった