「何でそんなに暗いんだよ〜
明日ライブだぞー?」
運転しながら
マネージャーの隆が
呆れたように言ったが
誰も答えなかった
重苦しい空気の中
隆の声だけが聞こえる
「そのゆかって子に
パワー貰いに行ったんじゃ
なかったのかー?
まったく…」
助手席の直人は子どもみたいに
膝を抱え丸まっていた
右隣に座る真治も腕を硬く組み
自分の足下を見つめ
黙っていた
「…隆、うるさい…
お願いだから黙って」
直人の言葉に隆は黙ったが
明らかに不機嫌そうだった
「ごめん、明日は大丈夫だから
今は我慢して」
真治が落ち着いた声で
フォローした
ゆかの母親は死んだ
父親が出ていき
母親は精神的に追い込まれていた
ある日ゆかの病室にきた母親は
彼女の首を絞めようとしたらしい
看護師が気付き
止められたがその直後
どこかに隠し持っていたらしい
ナイフで自分の体を突き刺した
ゆかの目の前で
命は助かったがそれ以後も
自殺行為を繰り返し
ついには飛び降り
結局亡くなった
母親の自殺行為を
目の前で見た日から
ゆかの声は消えた
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