「ゆかちゃんの病気って
治るのか?」
長い沈黙の後に
ようやく口を開いたのは
真治だった
「……」
俺はゆかの病気について
何も知らない
知りたくない
「子どもが病気になって
離婚する両親って
よく聞くけど…
簡単に治る病気だったら
ずっと入院することもないし
両親も…」
直人も口を出したが
まずいことを言ったと
思ったのだろうか
すぐに黙った
「ちゃんとそのことについて
聞いておいた方が
いいんじゃないのか」
「…怖くて聞けないよ」
ようやく絞りだすように
俺の口から出た言葉は
消えそうな情けない声だった
車内はまた
重い空気に包まれた