バイクの契約を済ませ、納車まで10日間ある。聡はその間、バイクを買ったという興奮と、操れるのか?という不安が入り交える日々を過ごした。
いよいよ納車日、聡は仕事に行くが、上の空。昼飯の弁当、何を食べたか覚えが無い。
仕事が終わり、自転車で通勤している彼だが、いつもは疲れた感じでノロノロ帰るのだが、今日の彼は全力でペダルをこいで、家に帰った。
家の車庫の前に一台のバイクが見える。
聡は家に入らず、バイクの前に立ち、笑顔でタンクを触っていた。
夕日に照されたその姿を心配そうに、母、君枝は暫く見ていた。
父、謙治が帰宅したのは日も暮れた頃である。「ただいま、どうだ?バイクは来たのか?」
母、君枝「えぇ、車庫の前で聡が見てますけど…大丈夫なんですか?バイクなんて…」
父、謙治「良いんだよ。バイクに乗ると、世間が解る。聡にとっての社会勉強はこれからなんだよ。どれ、俺も拝んでおくか」と言って暗くなってもバイクを眺めている聡の所へ行った。
父、謙治「オォ!!来たなぁ、どうした?エンジン掛けたらのか?」
聡「イヤまだだよ。そういえば、カギが無いナァ」
父、謙治「母さんが持っているんじゃないか?」
聡「とって来る」