春「ちょっと先生から呼び出されてて」
嘘ついた。
奈々「今日の帰りさ、猛たちと一緒にみんなで帰らない?」
春「猛くんタチ?」
奈々「猛の友達と。ほら昼休みよくベランダ通っていく奴ら。」
(それって透くんも居るよね?)
春「あ、あたし…、今日はちょっと…委員会の仕事あって」
私はまた嘘をついた。
透くんに会うとダメだと思った。気持ちを押さえた、叶わない片想いなんて苦しいだけだ。
まだ傷が浅いうちに諦めようと思った。
…放課後…
奈々「じゃあ、春、先に帰るね!バイバイ。」
春「バイバ〜イ」
しばらくすると教室に誰もいなくなった。
窓際の席に座ってボーっと時間が経つのを待った。
3日前の放課後、この席で奈々を待ってるとベランダに透くんが来て、初めて話したことを思い出していた。
冬が近づき、日が沈むのが早くなってきた。そろそろ帰ったほうがいい。
窓から夕焼けを見上げると一番星が光っていた。
私は窓を開けた。
冷たい風が入ってきた。
「委員会の仕事は終わった?」
ベランダ側の窓のすぐ下に透くんが座っていた。
私は驚きすぎて声が出ない。
透くんは座ったまま、何も言わない私の顔をチラっと見上げた。