龍一が旅立った次の日の早朝
K病院1階 ナースステーション
ナースA「ねぇ、聞いた?」
ナースB「もちろんよ。やっぱり本当だったのね〜。あの301号室の患者、ああゆうことしそうな顔してたし・・・。」
A「早く警察来ないかしら。あの患者、何しだすか不安でしょうがないわ。」
B「そうね〜。それにしてもあの患者・・・
人の家の猫なんか何匹も殺して、何が楽しいのかしら?」
============K病院2階 302号室
カラララララ・・・
病室の扉が開く。
病室の中を見ると、あるのは布団のはがれたベッド、その上に残された点滴の針のみ。
「・・行ったのね・・・。」
龍一の母、ハジメは淋しそうにそう言うと、ごみ箱の中を何気なく見た。
昨日、ハジメが書いた手紙がくしゃくしゃになって入っている。
ハジメはごみ箱から手紙を取り出した。
そして・・・
ビリ・・・ビリ・・・ビリ・・・
手紙を細切れにすると、窓を開け、風に流した。
ハラハラハラ・・・
風が強い。昨日から風は勢いを弱めてはいなかった。手紙は散々に宙に舞い、いつしか消えていった。
「嘘をつくのは、やっぱりつらいわね・・・。」
空を見上げると、あいにくの曇り空。まるで不吉を絵に書いたような天気だった。
「あなた・・これでよかったのよね・・。でも・・・一人は少し・・・淋しいわ・・・。」
一筋の涙が、ハジメの頬を流れた。
(りゅう・・・必ず生きて帰ってくるのよ・・・)