301を忘れない?

しすても  2009-10-09投稿
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301、僕にとって忘れられない数字となっている…


冬も足早に過ぎていこうとしていた頃、僕たちは出逢った。
窓辺にぴょこっと座っていた君は、どこか落ち着きなくまるでシベリアに取り残された狼の子供のようにも見えた。

コートからのぞくトナカイのような脚、今にも吹き飛ばされそうな細い体は厚着の上からでも容易に想像できた。

体の細さにちょうどバランスの良い小さな顔に、鼻筋がすっと通った、所謂博多美人である。


ジロジロ見ているのを遮るかのように、本社人事の採用担当から、名前は浅生美由紀、そう紹介された。

僕は東京の経営コンサルタント会社の福岡ブランチである小さな事務所で働いている。
ブランチでは企画営業が仕事だが、事務の女性が一輪の花のように咲いている。

その女性が急遽寿退社することになり、慌てて採用をかけて美由紀に来てもらうことになったのだ。


「浅生美由紀と申します。これからどうぞ宜しくお願い致します。」
必要以上とも思える位の丁寧な言葉遣いとお辞儀をされ、好奇心の塊だけで見ていた僕はそそくさと姿勢を正し、社外向けの当たり障りない挨拶をした。

それが、僕たちの出逢いだった。


引き継ぎを終えて少し慣れた美由紀は、最初の印象を大きく変えとても快活になっていった。
僕の1こ年上で29歳というのもあり、キャピキャピした感じというよりかは人なつっこいというか、オープンという表現が適当だろうか。
初めは「ハハハッ」という作り笑いのような独特の笑い方も、皆を和ませるようになっていった。

ただ、本社から人が来た時にはまた慇懃な挨拶に戻るところを見ると、どうやら僕と同じく人見知りの癖はあるようだが、美由紀が事務所の皆を虜にする華になるのにそう時間は要さなかった。



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