ほんの小さな私事(114)

稲村コウ  2009-10-09投稿
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吹き付ける風に押されつつも、香取君は、山下さんの居る方向に歩みよっていく。
「…クルナ…アッチヘイケ…………。」
それに対して山下さんは、ジリジリと後退しながら、異様な声でそう言った。
山下さんにまとわりついている赤と青の靄は、より一層、激しく蠢いていた。
よく見てみると、山下さんの体に青い靄がまとわりついていて、その回りを、赤い靄が覆い被さる様に蠢いているのに気付いた。
『青と赤の靄は、それぞれ別の存在なのかしら?まるで、あの赤い靄は、青い靄に取り憑いている様にも見えるけど…。』
そう様子を見ていると、不意に赤い靄の一部が妙な動きを見せた。それに続いて、赤い靄の一部が紫色に変色し、それが香取君を目掛けて飛んできた。
「香取君、避けて!」
先ほどの様に、私が、あの紫色ね靄を受け止めるのには、現状では無理である。
床に散乱している様々な物が足場の邪魔となって、香取君の前に飛び出る事が出来なかったのだ。
故に、彼には紫色の靄が見えないとは思ったものの、私は咄嗟にそう声をあげていた。
しかし、香取君は、それを避けようとする気配もなく、バチッという激しい音を立てて、香取君に命中した。
思わず目を伏せる私。だが、すぐに指先の間から香取君を見たのだが…彼は何事も無かったかのように、そこに立ち続けていた。

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