決戦の時間だ。
もっと正確にいうと、決戦投票の時間だ。
クラス委員の後藤くんが紙を配る。民主主義のルール、多数決で出し物を決める。
黒板に書かれた選択肢は、休憩所と…………
英語劇のみだ。
二つしかない選択肢。そこから選ばれるのだ。1か0か。どちらかしかない。
教室中に鉛筆の音が響く。それから、乱暴に畳まれる紙の音。ガサガサ。カツカツ。カリカリ。
しばらくして、後藤くんが紙を集める。原始的な方法。
後藤くんは自分からクラス委員をやりたかった訳じゃないようだ。クラスでも目立たないタイプの人間で、みんなに押し付けられた、というのが事実だ。そのみんなの中にはもちろん私も含まれる訳だが。
後藤くんは、丁寧に、時にはお辞儀さえしながら紙を集めていく。小さい身体がもっと小さくみえる。
私はなんだか寂しくなって目を逸らした。
私も、紙を渡す。「頑張れ。」と心の中で呟きながら。すると後藤くんは顔をあげた。
前髪が邪魔でよく見えないけど、綺麗な目をしていた。一瞬、目が笑ったような気がした。
やば、聞こえてた?と焦りながら、また目を臥せた後藤くんを凝視していた。
気のせいだったようだ。
良かった。
私は前を向く。あの人も何か紙に書いている。あれ、投票する気?
何かを書き終えて紙をくしゃっと丸めた。
そして後藤くんが教壇の前に立ち、紙を広げ始める。
私は祈るように黒板を見つめていた。