が、くさい 第四場

あこ  2009-10-10投稿
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決戦の時間だ。


もっと正確にいうと、決戦投票の時間だ。



クラス委員の後藤くんが紙を配る。民主主義のルール、多数決で出し物を決める。

黒板に書かれた選択肢は、休憩所と…………


英語劇のみだ。

二つしかない選択肢。そこから選ばれるのだ。1か0か。どちらかしかない。

教室中に鉛筆の音が響く。それから、乱暴に畳まれる紙の音。ガサガサ。カツカツ。カリカリ。


しばらくして、後藤くんが紙を集める。原始的な方法。


後藤くんは自分からクラス委員をやりたかった訳じゃないようだ。クラスでも目立たないタイプの人間で、みんなに押し付けられた、というのが事実だ。そのみんなの中にはもちろん私も含まれる訳だが。

後藤くんは、丁寧に、時にはお辞儀さえしながら紙を集めていく。小さい身体がもっと小さくみえる。

私はなんだか寂しくなって目を逸らした。


私も、紙を渡す。「頑張れ。」と心の中で呟きながら。すると後藤くんは顔をあげた。

前髪が邪魔でよく見えないけど、綺麗な目をしていた。一瞬、目が笑ったような気がした。

やば、聞こえてた?と焦りながら、また目を臥せた後藤くんを凝視していた。

気のせいだったようだ。


良かった。

私は前を向く。あの人も何か紙に書いている。あれ、投票する気?

何かを書き終えて紙をくしゃっと丸めた。


そして後藤くんが教壇の前に立ち、紙を広げ始める。

私は祈るように黒板を見つめていた。



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