ミミと初めて出会ったのは中学生だった。
東京から転校して来た女の子は、僕たちの憧れの的だった。
なぜこんな片田舎にと思った。ミミは気管支が弱いらしく、空気がきれいなこの町へ来たらしい。
コウは、母親の実家が東京ということもあって、ミミとすぐに仲良くなった。
ミミは人当たりがよくて、すぐにクラスに馴染んだ。
僕は仲良くなりたくて、コウに混ざって話をした。
ミミは理知的で、清楚で可愛かった。
僕はすぐにミミのことを好きになってしまった。
彼女に少しでも近づきたくて、嫌いな勉強も頑張った。
自然と部活にも身が入った。
その甲斐あって、僕はミミと同じ進学高校に入学した。
もちろん、コウも一緒だ。
コウの父は地元の名士で、県議員をしている。
コウは親の威光をかさに着ない、気さくでいい奴だった。
入学式のとき、僕はコウから宣戦布告をされた。
退屈な来賓の弔辞が響く中で、コウは名字が近いから、間に挟んで並んでいる奴など構わずに、僕に言った。
「俺はミミが好きだ。おまえも同じだろ。」
僕は本心を言われて、何と言ったらいいのか困った。それに隣の奴に聞かれているのも嫌だった。
何も答えないでいると、コウはそれを肯定と受けとったらしい。
「俺、お前にだけは負けたくない。エイはミミに会ってから変わったしな。」
僕は目を閉じた。ここまで言われて何も言わないのは、男らしくないような気がした。
「そうだよ。エイがミミを好きなのも知っていた。二人に追い付きたくて、僕は頑張った。」
「僕は逃げないよ、エイ。でも、どちらがミミと付き合うことになっても、恨みっこなしな。」
「ああ。分かった。」
こうして僕とエイはライバルになった。
もちろん親友であることにはかわりはないのだけど。