ようやくゆかが眠りについたとき
面会の時間は過ぎていた
「すみません、時間です」
和田さんが申し訳なさそうに
声をかけた
「ごめんな、ゆか」
泣き疲れ眠っている
ゆかの頭を撫で
俺は病室をでた
「ゆかの病気は治るんですか」
死という言葉が頭に浮かんでいた
和田さんは振り返り立ち止まった
「ゆかもいつか死ぬんですか」
「このままでいれば
確実に亡くなります」
少し間があってから
彼女ははっきりと答えた
「助かる方法はないんですか」
「…手術をすれば
生き延びる可能性はあります
……ただ…その可能性は決して
高くはありません…
同じように手術をうけ
そのまま亡くなられた方も
います」
「ゆかはその手術のこと
知らないんですか」
「何度か話してはいますが
やはり怖がって
受けたがりません」
「それでも、今より
手術を受けた方が
可能性はあるんですよね」
「確かにそうですが…
気づいておられるでしょうが
彼女の体力は落ちていっています
手術が後になればなるほど
体が手術のリスクに
耐えられなくなるでしょう」