村上さんの自己紹介が終わり、拍手が起こる。次は「八嶋」すなわち俺の番だ。俺はゆっくり立ち上がり、一先ず辺りを見渡してから話し始めた。
「んーと、名前は八嶋 魁と言います。出身中は北城二中、部活は……帰宅部でした。特技はバック転で、趣味はぶらぶら歩くことです。一年間よろしくお願いします。以上で……」
特技のバック転で少しざわついたが、無事自己紹介を終えた。心拍数が上がり過ぎて未だに下がらない。
(やっと落ち着ける……)
俺はすごくホッとした。
そして全ての自己紹介が終了して、宮垣先生が話しだした。
「はい、皆素晴らしい自己紹介でした。少しでも皆のことを知ることができてよかったと思います。これから一年間共に過ごす仲間ですから、仲良くして下さいね、はい。では、今から10分、休憩とします。10分後にはここに着席しておいて下さい。では休憩時間に入ります。」
そう言って先生は教室から出て行った。俺は緊張の糸が切れたのか、眠たくなってきた。そして、
(少し寝ようかな……)
と思ったとき、
「かい君、かい君……」
聞き覚えのある呼び名だった……相当昔の呼び名だ……だが思い出せない。
「久しぶりだね、かい君。小学校以来、まさか再会するとは。覚えてる?俺のこと。」
小学校……?かい君……まさか……
「れい?れいだよな……」
推測が確信に変わると自信を持って言えた。
「そうだよ。いやぁ懐かしい〜。まさかかい君が同じ高校だなんて。」
小学校時代の親友、神田 怜との奇跡的再会だった。
「しばらく見ないうちにでかくなったなぁ。れい、あの頃はこんな小っかったのに。」
俺は机と同じくらいの高さに手をやった。
「っ、小さすぎ!これはないよ。でもかい君も変わったね。」
そうだ。怜も、俺も、かなり成長し、かなり変わった。怜は、身長は俺より少し小さいが、あのころから大分伸びたし、顔も幼さが抜け、どこかおとなびている。しかしまだ少し童顔っぽいかな。
「でもかい君、天パは全然変わってないね。ストパーもあててないの?」
「ストパーなんてぼったくりよ。俺は割とこの髪型嫌いじゃないからな。」
そんな他愛もない話が少し続いた。
神田 怜、およそ7年ぶりの再会。未知のこの場所で彼の存在は俺にとって非常に大きかった。