男はふと
三番目の道を行った若者の目が頭に浮かんだ。
今思うと
若者の目は暗く、濁っておりあの少年のようにキラキラしていなかった。
あのままずっと光を持つ事は無いだろうと思った。
僕は今まで苦を避けて歩いて来た。それが正しいと思っていた。
でもそれは間違いだったんだ。
道が険しいと逃げたくなる。
当たり前だ。
けどそこからなんだ。
つらい事に一歩踏み出せるかどうかなんだ。
きっとあの子は立派な人間になれる。
あの子が出来るなら年上の僕にも一歩踏み出せるはずだ。
男は一番目の道に足を伸ばし、一歩踏み出した。
一瞬、『もう戻れない』という言葉が脳裏をかすめる。
足が重くなる。
だが、男は
『何も起こらないよりましだ』
と自分自身に言い聞かせて足を持ち上げた。
すると足は軽くなり、すんなりと前に前に歩いていった。
男の目は決意に満ち溢れ、キラキラと輝いていた。