6 椿へ
椿。
お前がこの文を読んでいる頃には,
父はもうこの世には居ないだろう。
誰も恨み憎しむのではない。
私の,自業自得なのだ。
お前は責任感の強い子だから,
父が今死ぬ事すらも,
自分のせいだと思っているのだろう。
お前の責任など少しも無いのに,
時折見せる思い詰めたような表情を見る度に,
私の心は酷く痛んだ。
お前の笑顔を奪ってきたのは,この父だったと思い知ったのだ。
本当にすまなかった。
お前の幸せは,父の側にはない。
早く私の亡骸を捨て行きなさい。
幸せは,
お前を見捨てず,
一生守り通すと誓った者の側にあるのだ。
幸せになりなさい。
自らそれを掴みなさい。
お前が,
自然な笑顔を引き出せる人に巡り会えるよう,
父は,心から願う。
≠≠続く≠≠