太陽が真上に上がった正午、僕はハーブと共に山羊を山近くの高い丘へ連れて行っていた。
いつもの丘の上から見える景色を眺めながら、昼食のサンドイッチを口に運んだ。量は少ないが、空腹感は無くなる。ハーブにも干し肉を与えると、嬉しそうに尻尾を振った。
サンドイッチを食べ終わると、僕はポケットに入れていたオカリナを取り出した。孤児院から持って来たオカリナだ。昼間は仕事が暇になるので、こうしてオカリナで時間を潰している。
オカリナの音色が丘の上から響く。遠くまで響くような澄んだ音色、その音色の色は山々の淡いブルーと上手く合っている。
ハーブはすっかり気持ち良くなって、眠ってしまった。
「ったく、しょうがないな」
そう言いつつも、僕はちょっぴり嬉しかった。自分の出した音色で誰かが幸せな気持ちになるのは、何だか気持ちの良いものだ。
「いい音色だね。山羊飼いさん」
ふいに後ろから声がした。僕が焦って振り返ると、そこには浅黒い肌の少年が立っていた。