「いいよ、言わなくて
ごめん」
「いや…」
真治が心配そうな表情で
俺を見つめた
「泣きたければ泣けよ」
「え?」
コン、と缶ビールを
真治はテーブルに置いた
「おまえはさ、すぐに強がるし
かっこつけるからなあ」
「…」
「お前が泣いたって
俺は馬鹿になんかしねえよ
弱音吐いたって
お前を弱い人間なんて思わない
だから泣け
言葉を口に出すより
泣いてしまった方がいい
どんなにかっこ悪くたって
みんなには黙っといてやるよ」
予想もしなかった真治の言葉に
俺は何も言えなくなった
いろんなものが崩れてゆく
そして溢れて涙になった
「…ごめん」
「謝んな
今日は付き合ってやるから
今は泣いとけ」
「…怖いんだ
愛が死んだとき
すごく身近に死を感じたんだ
今、こうしてる間にも
ゆかは…」
真治は何も言わない
視界はぼやけ
あいつの表情も見えない
「…ゆかに死んでほしくない
消えてほしくない
生きてほしい
ただそばで…笑ってくれたら…」
本当にそれだけ
そんな幸せが
何億光年も先に見える