海賊は全部で11人になった。
タクトとパールにとっては、さらに苦しい状況になってしまった。
「そっちが来ねぇからこっちから行くぜ!」
突然1人の海賊がこちらに向かって猛然と走ってきた。
「パール、できればあまり人は殺したくない。ぼくはなるべく急所は外すけど・・・協力してくれるかい?」
タクトは剣を構え横目でパールに協力を促した。
「本気で言ってるの!11対2でしかも相手は全力で向かって来るのよ!」
弓を引きながら目線を海賊達に向けたまま答えた。
「分かってるさ。そんなこと。けど、殺すのは・・・
いやだ!」
タクトは勢いよく飛び出して行った。
「バカ!作戦も無しに飛び出すなんて」
パールが一番手前の海賊の足に射おうとした瞬間
「てめぇら時間だ!傀儡のヤローが呼んでやがる!」
海賊達が出てきた船の上で、別の海賊がベルを掻き鳴らしながら叫んだ。
「ちょっと待ってやがれ!こいつらを・・・」
「バカ言え!ただでさえ遅れてんだぞ!」
ベルを掻き鳴らす海賊はなぜか異常に焦っているように見えた。
「へっ、悪ぃな」
「待て!」
「待つのはあなたの方よ。相手は11人になって、初めと状況は全く違うのよ」
パールは尚も海賊達の方へと睨みの利かせているタクトを諭した。
「だけど、あの人は!」
「あなたは死にたいの!」
パールは思わず大声を上げた。
「タクト、あなた、いえ、私たちの目的は海賊の討伐じゃないでしょ?」
「・・・だったら、君はこのままあの人がどうなってもいいのかい」
タクトは落ち着き、静かに言った。
海賊船はその間に出帆してしまっていた。
遠くの方でベルが掻き鳴らされる音が聞こえてくる。が、フラットとオキシーは微動だにしない。
「どうした?俺が船長だと知ってビビっちまったのか?」
「いいえ、ただ、あなたの様子を見てるだけです」
フラットは毅然とした態度で続けた。
「逃げるなら、早くした方がいいですよ」
「へへへへ、おもしれぇ。確かに早くした方がよさそうだな」
すると、オキシーはフラットに猪のような勢いで向かってきた。
「そうなるのか」
フラットは闘牛士のように左へかわした。
オキシーは体勢を整え、戦斧の頭上に掲げながら再び向かってきた。
フラットは素早くオキシーの懐に入り込むと何かの呪文を唱え始めた。