「先生…」
「こっから先は、お前が行ってこい。」
「……。」
幸輔は行こうとしない。すると香山先生はそっと幸輔の肩に手を置く。
「お前の…友達が、苦しんでるんだろ。」
「先生…」
幸輔は微かな声で先生を呼ぶ。
「オレは、ここで見てる。」
幸輔は、ゆっくり校舎の方へと歩いていった。
1歩、1歩。歩く毎に涙が出ていた。
なんか、香山先生の存在が、遠くなっちゃった気がしたんだ。
目から涙が溢れた。
視界がみるみる潤んできた。
でも、もう手の届かない所まで、離れたわけじゃないんだ。
涙を拭ったその時、
前方から、1人、女子が凄いスピードで走ってきた。「あれは…」
涼子だった。後ろにいた香山も気付いたのか、幸輔のもとへと走る。
「先生助けて!」
涼子は本気で頼っていそうだった。
「誰かに…追われてるの?」
幸輔は涼子に聞く。
「あの先生…とにかく助けて!」
涼子は2人の後ろに隠れる。
するとやがて、前から岩塚先生がやってきた。
眼鏡がやたらと光っている。幸輔からしてみれば不気味だった。
『…あいつか。いじ…いじわる先生って。』
香山は小声で幸輔に尋ねる。
『うん…』
「あっ…幸輔くん…久しぶり。」
「お…お久しぶり?でしたっけ。」
「涼子さん…見かけた?」後ろで怯えている涼子。
「涼子さんが…何かしたんですか?」
幸輔は自然と涼子をかばう。
「いえ。ちょっと話しておこうと思って。学級委員だしね。」
岩塚先生…もう分かっていたんだろう。
「幸輔くん…そこに隠れているのはまさか…。」
「いやぁぁぁぁあ!」
涼子は殺気を感じて一目散に逃げた。
2人はその後を追う。
誰もいなくなった。
いじわる先生の周りに。
「バーカ。」
その頃2人は涼子に追いついて話を聞いた。
「涼子…お前一体何したんだよ。」
幸輔は涼子に迫る。
「幸輔くんに話したって…分かるはずが」
幸輔はその言葉を遮った。「分かる!あいつは…表ではいい先生ぶってる。でも裏では生徒をいじめるいじわる先生だってこと。あの先生のせいで優太は変わったんだ。」
「私…その時の現場を写真で撮ったの。」
「えっ!?」
2人は驚きを隠せない。
「根性あるなぁ。」
香山は関心しているようだ。
「それで、その写真を神山先生に見せた。そして最終的に渡した。」
1つ、謎が解けた。