翼と彼女と……

shuger  2009-10-13投稿
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とても長く感じる物理の授業を終え、坂本は講義が行われていた第1講堂からケータイだけ持ってでた。夕日に映える少し面倒臭そうな顔をした男は持っていたケータイのボタンを何度か押すと耳元まで持ち上げた。
「あ、もしもし??」
電話の向こうからは女性の声がした。感情が高ぶっているのであろう、坂本の近くにいる人であれば話の内容とまでは言わなくても電話ごしに聞こえてくる大きな声が女性からのものだとわかるくらい大きな声だった。
「だから、今日は7限目まで出なきゃいけないからデート行けないって!俺のせいじゃねぇんだからそこまで怒るなよ。」
でも……と言って黙りこくったのか、それともただ声が小さくなっただけなのか、音が漏れなくなった。
「悪かったよ、帰ってからちゃんとあやまるから。わりぃ、今からまた授業はじまるからまた後で」
坂本はケータイの電源を切ると、また講堂へと戻っていった。

坂本が自分のアパートに帰ると、女性がひとり、ちょこんとソファーに座って待っていた。
「やっと休みとれたのに」
ふてくされた感じをだしながら女性は坂本に向かって言った。
「社会人のお前のほうが確かに忙しいとは思うけど、学生って身分もいろいろあるんだよ。」
坂本は女性をなだめるように優しく話したがそれでも女性は納得した顔を見せなかった。
「ゆうくんが悪いんだからね」
「そうですそうです。そんでもってあかりさまはなんも悪くないです」
機嫌をとりなおした女性が笑顔をもらすとそれにつられてか坂本も笑顔になり、いつしか二人とも笑いだした。

人生いつもうまく行くわけじゃない。そりゃそうだ、うまく行くだけじゃつまんない。だけど、うまく行かなくても笑顔でなきゃいけない理由なんてない。怒って、ぶーたれて、何しようがかまわない。ただ、最後に笑えるように心掛ければいいのだ。



「ゴメン、不機嫌だったからご飯作ってない」
「えっ!?」

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