シミの付いた壁と天井、泥が付き削れた床。そこからにおう埃と土と風のニオイが妙に気になる。
校舎の割れた窓とひびの入った壁から風が入り込む。
男と犬が廊下をゆっくりと歩み、隅々まで目を行き届かしていた。
何者かの気配を察したのか、犬が唸る。
同時に男が笑う。声を上げずに。
男と犬の前に天井からぶら下がる化け物がいた。
カビの生えたチーズのような肌で毛が無い。白濁色の瞳を持ち、下半身は無く、植物みたいに天井に張り付いている。
「お前…倒しに来たか?その犬、オレ知ってる」
化け物は乾いた唇を小さく動かした。
男はまた笑う。
「困った。参った。その恨み、聞きます。買います。晴らします。
私、妖怪変化の請負人が天井下がり様の依頼を請け負います」