『き、き、君達。
これは一体どういう事だ?!
こんな事をして、許されると思っているのかね?!
私の両手、両足の自由を奪い、口を布でおおうなんてのは、
立派な“監禁罪”に当たるぞ!!』
森宮の父親は、曲がったネクタイを手で直し、
パンパンッとスーツのジャケットからパンツの裾に向かって、
ホコリを手ではらいながら言った。
『“監禁罪”?!
ケッ‥笑わせるゼ。
テメェの息子のやっているコトの方が、よっぽどタチが悪いゼ?!
教育長サンよォ?!』
京谷さんは、鋭い眼光で、森宮の父親をギロリと睨み付け、
更に、その瞳は、息子の森宮 ヒロキへと向けられた。
『森宮アァァ!!
俺の妹が、2年前、テメェのせいで廃人にされた事実を、忘れたとは言わせねぇゼ?!』
『う‥うぅ‥‥。』
小さなうめき声と共に、
森宮の表情が、大きくゆがんだのが見えた。
――森宮 ヒロキは、京谷 龍二の妹を廃人にした?!――
まさか、そんなコトがあったなんて、
あたしには知る由もなかった。
だから、今回の件、京谷さんも協力してくれてるんだ。
きっと、そうなんだ。
そうなんでしょ?!
聖人?!
静まり返った控え室―――\r
ミズホさんも、
アヤカさんも、
黙って、森宮の様子を観察していて、
聖人は、森宮の出方を、ジッとうかがっている。
『何を言っているんだ、君達は!!
私だけではなく、息子にまで‥‥。
め‥“名誉毀損罪”で訴えるぞ!!』
森宮の父親の取り乱した姿を見て、
あたしは、昨日の職員室でのコトを思い出していた。