思い出 ?
「あなた!亜紀さんに会えるの、楽しみネ!」
妻の栞の、皮肉った声に、謙介は我に帰った。
「えっ?あぁ…」
謙介は38才で、栞は2才下。結婚して13年になる。
謙介は、栞との結婚前から、子供の頃の思い出として、亜紀との事を話していた。
謙介は、過去の恋愛歴を、面白い可笑しくオープンにし、栞もそれを、過去の事と受け入れていると思っていた。
実際に栞も、焼きもちを焼くこともなく、それらの話を、笑いながら聞いていたが、女心は微妙である。
今、中野智樹からの電話で、顔はニコニコしていても、心の中は、複雑だった。
結婚して13年。これ迄浮気の気配は無く、自分だけを愛してくれる夫。子供たちの良き父親であった。
しかし、中学校を卒業してから、一度も会っていないと言う、亜紀と再会し、昔の愛に火が着いたりしないだろうか?