かつて、神と神による争いがあった。
その争いは激しく苛烈を極め、世界は一度破滅した。
神は悪神、邪神等を屈服させ、世界は破滅への歩みをようやく止めた。
悪神、邪神は自分達の世界へ幽閉され、全能の神が作り出した人間という存在に極力関わらせない事にした。
神とて、善悪の天秤が釣り合わねば世界は成り立たない事は理解しており、悪神や邪神を消滅させるような事はしなかったのだ。
神は、これ以上自らが作った世界の破壊を、破滅を目にしたくはなかったのだ。
世界に、平和という名前の予定調和が訪れた。
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時は流れた。
眩暈がするほどの長い時の中で、死の神は自らの分け身を創った。
死の神とて、生死の天秤が釣り合わねば、世界が成り立たない事は知っている。
悪しき神達が封じられた今、その天秤は圧倒的に生に傾いている。
生死の調和を作り出すために作り出された、神の都合のための存在。
その名を、
【死の者ゼル】
という。
死の神が幽閉される世界
【冥土】
に、流れ着いた汚れた魂の人間を地獄にて浄化し、分け身とした者。
長い黒髪を持ち、男とも女ともつかぬ、凛々しくも華奢な風貌と、
血を感じさせる真紅の瞳を死の神は気に入ったのだ。
日頃は、冥土や地獄の設備の番人をさせ、必要とあらば召喚し、世界に影響をもたらさせる。
裁きの大鎌を持たせ、様々な神の道具も与えた。
それこそ、神の都合のための存在。
それが、死の者ゼルだ。