オメガ

サン  2009-10-14投稿
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「カシーン!!」

鋭いダイヤモンドのような細長いものが、孤を描きながら空を切った。

年末押し迫るクリスマスイブ、神谷は彼女を手に入れた。

狭い都心の一戸建ての庭で、神谷は美樹とフェンシングで勝利した。

「私は誰のものにもならない。」

そう美樹は藤一に、情事のあとに言った。


京王医科大と白鳥女子医科大の合同サークルで、神谷藤一は天海美樹に出会った。

大和撫子を絵に描いたような容姿。

しかし、人を射るような、それでいて触れる者を引き付けずにはおかない瞳が、それを裏切った。

学内でも、長身のクオーター美人の新入生は、こちらの大学までも鳴り響いていた。

でも、エスカレーターで上って来た女の子たちの間では、男の噂を聞かない、ミステリアスで変わった子だということを、藤一は知った。


藤一は、彼女に興味を持った。

飲み会で、藤一は美樹の右側をキープしながら話しかけた。

「天海さんは、なにかスポーツでもしているの?」
美樹は酒に酔った潤んだ目で彼を見た。

「ええ。なぜ?」

「いやさ、筋肉のつき方が、僕のやっているフェンシングに似ていたから…。」

しばらく何も答えない彼女に、藤一は気を悪くさせたかなと思った。

「ごめん。初対面でいきなり失礼だったよな。」

慌てていると、
「いいえ。ただ驚いただけなの。亡くなった母がフェンシングの選手だったから…。」

藤一が謝ろうとすると、美樹は彼の口を綺麗な細長い人差し指で、押さえた。

「あやまらないで。
そういうの、苦手なの。」

黒目がちな猫目の彼女が言った。

僕は胸の内が締め付けられるように苦しくなって、彼女の腕をとった。

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