世間知らずで変わり者ではあるけれど、天才的な頭脳を持つ化学者がいます。
ある日、馴染みの新聞記者がやってきて、愚痴をこぼしました。
「もう僕、女性なんて信用できません!」
「いきなりどうしたんだね?」
「昨日、彼女と食事の約束をしたのにドタキャンされた上、別の男と歩いているのを見てしまったんです!
酷いと思いませんか!?」
「女心と秋の空か……。もう秋だね」
「季節を感じてる場合じゃないですよ!
こうなったら僕も浮気してやる!」
「ふむ……そうだ、これを試してみるといい」
「何です? この変な色の薬は?」
「ちょっと耳を貸しなさい。これは染色体のゴニョゴニョ……」
「えっ――! 女になれる薬!?」
「そうだ、この間マウスで成功したのだよ。
ちょうど若い男性の実験体を探していたのだが」
「何だか急に悪寒が……」
「まあまあ、女性心理を知るのも重要だよ。
実は、私自身も試してみたから大丈夫だ」
そして数日後。
「もうあたし、男性なんて信用できません!」
「今度はどうしたんだね?」
「だって彼、女の方が良いって言うんですもの!」
「……君、もう私に近づかないでくれないか」