夜が明けかけた頃
走る 走る
君は走る
立ちこめる
深い霧の中へ
追う 追う
私は追いかける
薄れて聞こえる
君の足音を
霧の中
君が見えずに
足音も聞こえない
引き返そうにも
どちらから来たか
判らない
あたりはただ白くて
宛もなく
歩き回り
疲れて
立ち止まったら
背後から聞こえた
「諦めなよ」
振り返ればそこには
どす黒い私の影
逃げようとして
思い切り
駆けても
重い霧
振り払おうとしても
影はついてくる
霧は晴れない
夜はまだ明けない
暗い中で誰かが
呟いた「おやすみ」
あれは君か 影か
力尽き
膝をつき
地に伏し
気がつけば
夜は明け
霧は消えた
君も消えた
叫べども
喉が裂けども
君はいない
もう私の声以外に
音はない
涙は知らないうちに
渇れていた