「ほら。ボサッとしない!着替えて顔洗って、さっさと食ってさっさと…」
「分かったよ。」
しぶしぶ龍吾は返事した。
今日、本当の親が来る。
なぜ、オレたちを捨てたのか?その理由を絶対に聞いてやる。
「絶対…」
午前九時。玄関に白い車がとまった。
『ピンポーン』
「来た。」
姉ちゃんは慌てて玄関を開ける。
「……久しぶり。」
「…お母さん、お父さん…。」
姉ちゃんは、かすれた声で言った。目には涙があふれてる。
「とにかく上がって。龍吾も…」
龍吾は、姿をあらわさない。
「リビングでちょっと話そう。きっと…」
「恥ずかしいのか。」
父親は少し笑みを浮かべて言った。
「おぅ。久しぶり。」
「十年ぶりだな。龍吾…。」
「……」
涙が出ない。そしてついに、
「最初からこの話で悪いんだけど、なんでオレたちを捨てたの?」
「それは…」
なかなか答えようとしない。すると姉ちゃんが、
「あんなに幸せな家族だったのに…何で?」
「……うん。」
母ちゃんはなせが父ちゃんと一緒にうなずき、
「今から十年前ね、お父さんの会社が倒産して、多額の借金を背負うことになったの。でも、子供達を育てなければならない。私は死にものぐるいで働いたわ。でも、借金は減るどころか、どんどん増えていったの。いろんな会社との損失でね。だから私達、考えた。二人の子供を育てるには、まだまだたくさんのお金がかかる。だから、お金を…奪おうと。そして、何千万という借金を返すのと、子供のために詐欺をしたの。でも、あなたたちには、とにかく私達の借金のこと、詐欺をやっていること、全部秘密にして幸せを装って暮らしてきた。でも、世間は恐かった。警察に通報したと言うの。だから私達、逃げる勇気がなくて…明美と龍吾を孤児院に送ったの。それから、夫と合流して、自首したの…。」
考えられない。
親が…まさか親がそんなことを…?!
「私達は、十年も刑務所で過ごした。そして昨日、やっと出所できたの。だから…このことを謝ろうと思って…ごめんなさい。」
「…ごめんもなにも、オレ達このこと聞かなかったことにする。」
「…えっ?!」
親は口を開けて驚く。
「だって隠してたことなんだろ?謝られても困る。オレは、ただ納得しただけ。」
「……」
しばらくの沈黙。親の目には涙。
「ありがとう。龍吾。明美。本当に…ごめんね。」
「本当に…ごめんな。」