男は僕を含めその4人で女の子は遥と美咲の二人がいた。
遥は僕の初恋の女の子で、今は地元を離れ県外へ嫁で嫁いだらしい。ただ、僕は彼女に自分の気持ちを打ち明けれなかった事が今でも悔やまれる。永遠の片思いだ。その相手も今は亭主持ちの子持ちの普通の女性だ。
そして最後は美咲。昔から飛び抜けて明るかったが、家が貧しかった為に何処か遠い町で水商売をしているらしい。彼女は昔から少し僕らよりマセてて大人なところがあった。きっと彼女ならそうした仕事で成功できるだろう。しかし、僕らとしてはもっと別の道を歩んでほしかった。
僕は秋の祭のみこしを見たり、笛の音を聞いたりすると、昔の思い出を懐かしむ。昔は、とても楽しかった。しかし、僕らはもうあの時代へは戻れないし、僕ら全員が揃う事も無い。なんだか感無量である。
僕はダイニングに飾ってある昔の祭の写真を手にとり、あの頃を追憶した。
春樹が祭のはっぴを着て、犬に吠えられてビビッている。
光一は爆竹を手に取りあちこちで大きな音を響かせている。
敦志はおみこしを真剣に振り、「ワッショイ!」と力んで叫んでいる。
遥は笛をピーピー鳴らして、年下の子を指導している。
美咲は賽銭箱を手に取り、各家の人から寄付金をもらっている。
あの頃の思い出が鮮明に蘇る。でも、もうあの頃には戻れない。
僕らは違う道を歩んだんだ。
窓の外では祭のざわめきと秋風が優しく吹いている。
完結。