「藍田さん…ね。今日は来てたけど、また屋上か図書室にいるか…かな。」
「ありがとう。」
あなたのクラスの人が同情したような表情をして教えてくれた。
あなたを訪ねてくるのは自分の彼氏があなたに夢中になってしまった女の子ばかりだったから。
放課後、あなたはどこかで本を読んでいるか、もう学校には居ないか。
暑さが和らいで人々を活気付けたり、怠惰にさせるような夏の金色の日差しも少しずつセピア色に褪せ始めていた。
「読書日和、かな。」
私は目の前に居ないあなたを思い浮かべて独り言て、少しだけ急ぎ足で屋上に向かった。
階段を一段とばしで登って、屋上に出る扉のドアノブに呼吸を整えながら深呼吸してそっと手をかけた。
音を立てないように扉を開いて外に出た。
「今日はもう帰っちゃったか。」
誰もいない屋上はコンクリートが目の前に広がっているだけで、校舎から聞こえてくる声と様々な楽器の音色や校庭から聞こえてくるランニングのかけ声がもっと遠い場所からの音に感じられるくらい切り離されているみたいに静かだ。
「読書日和、なんだけどな。」
また独り言て、自分のクラスに戻ろうと足を向けた。