距離にしたら500〜600メートルぐらいは離れているだろう。
なにも無い一本道だから真っ赤なスポーツカーが見えたが、どこかの信号で曲がられてしまったら、もう終わりだ。
さすがにバスの運転手に「あの真っ赤なスポーツカーを急いで追ってくれ!」などとは言えないが…心の中では「早く、早く」と叫んでいた。
その叫びが届いたのかどうかは分からないがバスは一度も信号で止まる事なく真っ赤なスポーツカーとの距離を縮めていった。
それに駅に近付くにつれ渋滞してきた。
真っ赤なスポーツカーとバスとの距離が200メートルぐらいまで近付いた時、ついにバスは信号で止まってしまった。
信号が青に変わってバスが動き出す頃、真っ赤なスポーツカーは左へと曲がって行ってしまった。
捕まってしまった信号の少し先にバスの停留所が見えた!
咄嗟に俺はバスの停車ボタンを押した。
終点の光(ひかり)駅の一つ手前の停留所だった。
終点の一つ手前の停留所で降りるやつなんて殆どいないだろう。
しかし、真っ赤なスポーツカーを追うならバスから降りて探した方がイイに決まっている。
なにも俺は駅に行きたい訳じゃないのだから。
バスの運転手は「コイツ、ここで降りるのかよ」と言わんばかりの顔でバスを停留所で止めた。
俺は急いで運賃箱に有りったけの小銭を入れてバスから飛び降りた。
バスの運転手は驚いた表情で暫くドアを開けたままポカンとしていた。
小銭と言っても合計で1200〜1300円はあっただろう。
俺のマンション近くのバス停から、この停留所までは180円だから凄い金額だ。
バスの運転手がポカンとするのも当然かもしれない。
俺は真っ赤なスポーツカーが左に曲がった所まで猛ダッシュで走った…が真っ赤なスポーツカーは既にいなかった。
諦めずに、もう一つ先の角まで走り左右を見た。
一瞬だったが真っ赤なスポーツカーの後部が左の通りから3本向こうの通りへ走って行くのが見えた。
つづく