ゆかの手術の日は近づく
俺の気持ちに反して
仕事はますます忙しくなった
病院を訪れるたび
日に日に体力を失っていく
ゆかを見て
毎回胸が痛んだ
それでも彼女は精一杯笑う
――「…あれ…隆、
この日の仕事は?」
毎日ずっしり詰まった
スケジュールに1日だけ
空っぽの日があった
ゆかの手術の日だ
「…ゆかちゃんって子の
手術なんだろ?」
隆は面倒くさそうに
答えた
「…ありがとう」
「…はいはい
仕事頑張って」
「みんな応援してるって
ゆかちゃんに伝えてあげて
はい、これ」
そばにいた直人が
手渡してきたのは
かわいらしいお守りだった
「お前にじゃないよ?
ゆかちゃんに渡してあげて」
「…ありがとう」
「あ、俺からも…」
真治が渡してくれたのは
古そうなお守りだった
「親父がね、手術した時に
持ってたお守りなんだけど…」
「あれ、真治の親父さん、
死んでなかったっけ」
「…生きてるよ
その手術は成功したんだ
だからご利益あると思う」
「真治…ありがとう」
「…ゆかちゃん
きっと大丈夫だよ」