――「大丈夫?」
ゆかは俺が持ってきたギターを
いじりながら顔をあげ
いつものように笑った
ポロンと適当に奏で
嬉しそうに顔をあげた
俺はその様子をただ眺める
「…おもしろい?」
彼女はまるで幼い子どものように
笑って頷いた
「ここと…ここ、
…そう、そう
押さえて弾いてごらん」
彼女の細い指が丁寧にコードを
押さえ病室内に音が響く
その瞬間、彼女の顔が
ぱっと明るくなった
嬉しそうにはしゃぐ彼女は
一層幼く見えた
やがてギターにも飽きたらしい
いつものメモ帳を取り出す
『退院したらやりことがあるの』
「なに?」
『まず、拓也のライブに行く』
「うん」
『あと、拓也とデートするの』
「どこでも連れてくよ」
彼女は笑う
『拓也と一緒に住むでしょ』
「うん」
『拓也の部屋、汚そうだから
片付けてあげる』
「そう」
『それから、多分拓也は
忙しくて寂しくなるから
犬を飼う』
「ああ、飼おう」
『本当に?』
「うん、猫でもいいよ」
彼女は微笑み少しうつむいた