閑静な住宅街
いつものように聖二は
一人自転車をこぐ
―結局また翼らのせいで
しょうもないバスケの試合に
なってしまったわ
光希に悪かったな
まあなんだかんだで
一緒にやっとったしいっか―\r
家に着き自転車を停め
静かにドアを開ける
音をたてずに慎重にドアを閉め
まっすぐ自分の部屋へと
やはり静かに階段を上った
「…聖二?聖二帰ったの?」
階段の途中で
母の声が追いかけてきた
聖二はため息をつく
母の足音が近づく
やっぱりばれたか
「今帰りました!」
聞こえるように叫ぶ
階段の一番下に母の姿が見えた
「学校でまさか居残り?」
母の鋭い目が聖二をとらえる
「いや…いつもの」
「またバンド?!
あなたねえ、来年3年生よ?
もう…高校だって結局T高諦めて
今の学校になってしまったのよ?
また同じように…」
「わかってるよ!
もういいやろ?」
母の話を遮り
さっさと部屋に入った
―もうそんなに
勉強やら将来やらって…
今しかできひんこととか
俺にはもっとやりたいことが
いっぱいあんねん…―\r
机にむかいかばんから
譜面を取り出した