目的もなくただ歩いていたら、思いがけないものを拾った。一人の男だ。背は低く、痩せているがおそらくあたしよりは年上だろう。白く透き通るような肌に黒のスーツ。その時あたしは、その男がグレーでないことに全く気がついていなかった。男は裸足だ。息は荒く、苦しそう。少し開いた目で、あたしのことを見ている。 「こいつ、死ぬのか。」そう思った。しかし、その思いとは裏腹に男の唇がかすかに動いた。 「た・す・け・て」 あたしにはそう聞こえたんだ。 つづく…
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