飼育員1
「蛇が見付かったって?」
飼育員2
「ほら、そこ」
そう言って、指さした先にはハリネズミの檻があって、その中で巨大な蛇がぐったりとして死んでいました。
その胴の中程が膨らんでいて、その中から外に向かって無数の針が突き出していました。飼育員1
「ハリネズミを呑んだのか?」
飼育員2
「そうみたいだな。それでお腹の中で針を立てられた」
飼育員1
「しかし、このハリネズミも馬鹿だよな。最初っから針立ててりゃ呑まれる事もなかったんじゃないか。蛇だってそんな針だらけのやつは呑まないだろ」
飼育員2
「俺、このハリネズミの係だったんだけど、多分子供を守ろうとして、それで蛇を倒すためにはこの方法しかなかったんじゃないかな」
飼育員1
「子供…?子供ってどこに?…いないじゃん」
飼育員2
「こいつの子供は死産だったんだ。それで俺が檻を掃除した時うっかり忘れたあれを自分の子供と思い込んでいたらしくて、離さなかったんだよ。」
そう言って、檻の隅に転がっているタワシを指さした。
飼育員1
「じゃ、こいつタワシのために命を賭けたのか…」
飼育員2
「ほんと、笑っちゃうよな」
そう言って、寂しそうに少し笑った。
それは小さな動物園の片隅の、小さな檻の中の、小さなハリネズミのお母さんの物語。
可笑しかったら笑っておくれ
哀しかったら…
泣いておくれ