私は帰り支度をしながらみずきに答えた。
「うん。兄から伝言を頼まれててね。」
みずきは、私が自分と同じ様な境遇になっていると思っていたらしい。
「お兄さんからの伝言…か。藍田さんって色々な人が放っておかないのね。」
みずきは天井に向けて大きくため息をついた。
「翔もね、藍田さんが放っておけないんだって。ひとりにしておけないんだって。私だって翔において行かれたくないのに。わけわかんない。」
みずきはそう言いながら顔を私に向けた。
目には涙の膜が出来ていて、もう少しで零れそうだった。
「藍田さん、私になんて言ったと思う。返すとか返さないとかそういうつもりはないって。公園の滑り台みたいに順番を待つものでもないでしょ、って。彼の目の前に藍田さんがいて、その間だけでも私を忘れていた彼が悪いって…隙があったときに他の女の子が目に入ったんだから私たちは終わってたんだって…戻る戻らないは彼の勝手だって…」
多分、胸一杯にためていたんだろう。周りからは慰められるだけで、みずきのやりきれない思いは誰にも分からなかったみたいだ。
あまり知らない私に一気に胸一杯にためていた言葉を吐き出した。