知ってるよ。?

やまだ  2006-08-06投稿
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知ってるよ。


あなたがあのひとに大事に想われてること。

でも、あなた知らないでしょ。

あたしだって
あなたのこと、大事に思ってること。




――…?…――



『たまご…アレルギー…』



泉先輩がうそついてると思ったけど、
すぐにそうじゃないとわかった。

『ごめんね、一生懸命作ったのに…』



本当に申し訳無さそうに謝っている。

『……いいんです。たまたま作って、余ったからあげただけなので。』


あたしは笑って返した。
そして、紙袋を受け取った。


『ヨシには、なんて言ったらいいかな…』


そんなこと


あたしに聞かないでよ。



『…泉先輩が食べちゃったって言えば、許してくれると思いますよ。』

また、あたしは笑って返した。
『じゃぁ、あたし帰るんで。』


泉先輩が、その後なんて言ったかなんて聞いてなかったし、聞きたくなかった。


カップケーキの入った紙袋は、やけに軽く感じた。


あたしの気持ちが、全部とんじゃったからかな。



涙がポロポロ止まらない。



紙袋は、どんどん軽くなっていく。


かわいそうなあたしのカップケーキは
紙袋から出されないまま、地面に落ちた。





『…ッ…美味しいって…言ってもらえればそれでよかったの…』



――鈴木くんなら、きっと受け取ってくれるよね。――




昨日の気持ちがフラッシュバックする。



ポロポロと涙を流していると、あたしの前にあった紙袋は
いつの間にか消えていた。


『…あれ…?…わッ!』


髪がクシャクシャっとなる。



『な、なにッ…誰ッ…!!』

『うわーまずぅーなんだこれスポンジ?』



いつのまにかゆうたがあたしの隣でカップケーキを頬張っていた。



『それあたしの…ッ!』
『拾ったんだよ。まずいなこれ。』
『…うるさいなぁッ…』
『…うん。まずい。相手の手に渡らなくてよかったな。』
『…うるさいなぁ…ッ』
『…でもさ、なんか…頑張って作ったんだな。』
『…………うる…さいっ…』



ゆうたはずっと隣にいてくれた。
あたしはずっと 泣いていた。



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