「くっ…」左肩を触ると手の平には真っ黒な血が付いている。
痛みは意識からだんだん遠のき、降りしきる雨は心なしかゆっくりに見える。
こんなことになるんなら緒乃さんの言う通りに署で待つべきだった。
左を向くと水溜まりを踏む音は駅の方へと駆けて行った。
「すまない、許してくれ」霞んでいる…男が俺の隣へ近づき言った。男の右手は真っ赤に染まっていた。
冗談じゃない、お前が刺したんだろ。傷の深手のせいだ声にはならなかった。
「すまない…」聞き覚えのある声…微かに残る意識のなかでその男をみた。
やけに暑い日だった。まだ梅雨明けしたばかりだとゆうのに、これが温暖化の影響によるものなのか、俺には調べるすべはない。
「またそんなの飲んでるのか」
上司の緒乃さんは俺が張り込みに着くときいつも試しに飲んでいる新製品のフルーツジュースを見て笑った。
刑事は缶コーヒーとタバコか?コーヒーは苦手だ、それにまた長時間を車のなかで自分の父に近い歳の上司といるんだ、少しでも遠いものを飲んでいたいと思ってしまう。なんて頭の中で言っていた。
緒乃さんは俺が刑事になってから、後任を育てる為に行動を共にしている上司である。