――あれから2年…かな…
「拓也、帰るの?
このあとの打ち上げは?」
「悪いけど今日は帰るよ
ずっと家に帰れてなかったし」
「そっか…
まあやっとツアー終わって
帰れるもんな」
「え、拓也
打ち上げ来ないのかよ
じゃあさ、これ渡してあげて」
直人が嬉しそうにビニール袋を
手渡してきた
「何これ?」
「プリンだよ
好きって言ってたじゃん
さっきたまたま見つけた」
「ありがとう
喜ぶと思うよ」
俺は直人や真治、
スタッフ達と別れ
一人車へ向かう
デビューして以来最多公演となった
ツアーがやっと終わった
ファンも増え
どのライブも大成功だ
俺は車の助手席に
直人のプリンと
スタッフから渡された
ツアー中にもらった
ファンレターを置いた
ずっしりと重い
このたくさんの手紙のように
彼女から
手紙がくることはもうない
俺は車を自宅へと走らせた
外の街灯の光が
窓から車内にはいり
薬指が光った