……覚悟は、していたから。
周りがどう言おうと、もうどうでもいい。
「いないな…。」
幸輔は一体どこへ…?
香山と涼子は未だに諦めず探していた。
「さっき、あっちの方で、音がしたけど。」
「まさか…。」
涼子は香山を促した。
「行ってみるしかないでしょ。」
銃声が響き渡った桜川大橋周辺。
張り詰めた空気がみるみる解かれていく。
「幸輔…?」
優太は幸輔を呼ぶ。
幸輔は、動かなかった。
でも、耐えているのか、倒れてはいない。
「優太…よく見て。」
幸輔の体でよく見えなかったが、優太は幸輔の前を見た。
「えっ…。」
そこには、血を流した神山先生がいた。
もう、死んでいた。
「ま…まさか…。」
「神山先生が、撃つ直前にかばってくれたんだ。」
「マジかよ…。」
神山先生が幸輔を救える唯一の手段だったんだと思う。
いじわる先生にもう、踊らされたくなかったんだろう。
「素直に…喜べないよ。幸輔は助かったけど、先生が…」
優太はいじわる先生を睨みつけた。
「あいつが…あいつが悪いんだよ!」
いじわる先生は優太の一言に動じることなく、冷笑を浮かべながら、手袋を脱ぎ去っていった。
幸輔は疑問に思った。
「何で…手袋をはめていったんだろう。」
「きっと、これも計画なんだよ。」
優太は独り言の様に言った。
「あと大丈夫か幸輔。ケガは?」
幸輔は首を横に振った。すると優太は立ち上がった。「とにかく逃げよう。あいつが逃げたんなら、オレたちが警察に捕まる。」
幸輔はうなずき、2人は帰ることにした。
帰り道。
「その傷とか見て、親は何か言った?」
幸輔は心配そうに言った。「オレは前、あのバカ教師に暴力振るわれた時、親は心配したよ。でも、単なるケガだって…言ってあるんだ。」
幸輔はうなずいて聞いていた。
「そう…なかなか言えないよね。」
「もし言ったら、今度オレだけ暴力を振るわれるのでは済まされないと思う。オレの親は、絶対先生に言うから…」
「家族全体が狙われるって事も?」
「それが…それが嫌だからオレは…オレは…。」
優太の目から涙が溢れてくる。
幸輔は唇を噛んで、優太の背中をさする。
「絶対に…1人でいじわる先生からの攻撃に耐えなければいけないんだ。」
正直、このまま耐え続けるのも優太が辛くなるだけ。幸輔は、優太の友達として、守らなければいけないんだ。
幸輔の頭に、ある言葉がよぎった。