『いじわる先生退治』
ふと頭に、その言葉がよぎる。
耐えてばかりじゃいけない。
幸輔は、ずっとそのことを思いながら、優太の背中をさすり続けていた。
そこに、香山と涼子が来た。
「2人とも、大丈夫だったか。あっちの方で、銃声がしたから…。」
香山は心配そうだった。
「先生…でも…神山先生が…」
幸輔は事情を説明した。
「そうか…。とうとう、人を殺した…。」
香山は表情を曇らせる。
涼子は言葉にならないようだった。
「とにかく優太は、病院に行きなさい。」
香山の訴えに、
「大丈夫だよ。」
と優太は答えた。
幸輔は何となく、その理由が分かる気がした。
『オレ1人…耐えてればいいんだ。』
翌日、始業前に全校集会が行われた。校長の南克也は真剣な顔で、
「えー、昨日、保健の神山先生が、自殺をしました。誠に残念ではありますが、今日から1週間、保健室は使えません。」
みんながざわめく中、幸輔と優太だけ凍りつくような衝撃が走った。
……〜自殺?〜……
明らかに……
あいつが殺しただろ?
優太は叫んだ。
「自殺じゃねぇ!」
騒めいていた体育館が静まり返る。
全員が優太に注目する。
「優太。言わなくて良かったんだよ。」
幸輔の声に優太は耳を傾けていないようだ。
「岩塚先生に殺されたんだ!オレ見てた!」
えっ…
マジで…?
再び騒めく。
「優太…」
涼子は信じているようだった。すると、ステージの上に、岩塚先生が上がった。「校長、ちょっといいですか。」
「は…はぁ…」
南校長も殺人犯を見ているような目だった。
「でも…証拠はあるの?」優太は黙ってしまう。
「銃には神山先生の指紋が着いてたって…警察言ってたんだけどな。」
「…え?」
再び、再び騒めく。
「でも、オレ見た!」
「見た。とだけなら誰でも言えるよ。」
どこから感じるこの威圧感…。
すると幸輔がステージの上へ上がった。
「そう…そういう事だったんですね。」
ざわめきが、止まった。