怜のところに行くと、俺に気付いた怜が話しかけてきた。
「あ、かい君。暗証番号何にした?」
「教えたら暗証番号の意味無くなるだろ。いくられいでも教えねーよ」
「えー、俺のこと信用してないのー?」
そんな冗談を言い合う。怜だけが学園内の心の支えだ。怜がいるから精神的にもすごく楽なんだと思う。これは恐らく怜にも同じことが言えるんだと思う。お互いがお互いを支えあっているんだ。
10分はあっという間に過ぎた。やがて先生が教室に来て俺は自分の席へと戻る。
「はーい、皆座って下さい。昨日渡した書類、持ってきて下さい。」
先生がそう言うと俺は待ってましたかのように大事にクリアファイルに入れておいた書類を机の上に出す。それを順番に集めていく。
「はい、全員分確認できました。昨日言った甲斐があって私も良かったと思っています。えー、じゃあ連絡を……奨学金を申し込む生徒は期限までに進路指導部に届け出て下さい。期限を過ぎてしまうと受け付けられないので注意すること。あと、明日は始業式なので、8時30分までに集合して下さい。時間厳守です!」
先生は最後の言葉を明らかに強調した。皆の頭の中にしっかりと焼き付いただろう。
「私が伝えることは以上です。これからの時間は学級活動の時間ですが、皆さん何かしたいことありませんか?遊びでもなんでもいいですよ。」
予想外の学級活動の時間が与えられた。
(本当になんでもいいなら何するかな……?)
皆顔を俯せ考えている「フリ」をしているのだろうか?いっこうに手を挙げる者は現れない。
「じゃあ何か考えた人にはPPをやりましょうか、はい。」
先生がそういうと素晴らしい反応速度で一人の男子生徒が手を挙げた。
「ドッジボール!」
眼鏡をかけた大人しそうな生徒だ。髪はやや短く、あまり目立たなそうなタイプだが、手を挙げたことでクラス全員から視線を浴びる。
「ドッジボール出ました。他ないですか?」
先生がそう言った後、また眼鏡が口を開く。
「先生、PPは本当に貰えるんですか?」
先生は少し驚き、微笑しながら答えた。
「あぁ、あれですか?ああでもしないと何も出ないから冗談言っただけですよ。」
「そんなぁ……」
眼鏡は落ち込みながらゆっくり座る。周りから小さな笑い声が漏れる。