桜の花が散る時に、一緒に消えておけばよかったんだ。
そうすれば、今、こんな想いをしなくてすんだのに。
あの家出の夜に、思いっきり泣き叫べばよかったんだ。
そうすれば、今、泣くに泣けない気持ちを押し殺さずにすんだのに。
世界は残酷だ。
それをわかった上で生きている人間は、もっと残酷だ。
残酷で、強い。
強いから生きていける。
寂しさを殺す術を知っているんだろう。
傷つけられず、集団の中で、うまくやっていく自信があるんだろう。
好きなんだろう。
誰よりも、まず、自分自身が。
それなのになぜか。
私たちは誰か大切な人を探して。
すべてをぶちまけたいと思っている。
強いはずなのに。
それほど期待もしてないくせに。
信じてないくせに。
私たちは何食わぬ顔をして、実は血眼になって誰かを探している。
分かち合える人を。
心から信頼できる人を。
自分に合わせてくれる人を。
自分から他人に合わせる気はないくせに。
わがまま。
でも、きっとみんなはそうやって生きている。
昔は子供だったからわからなかった。
愛と勇気と優しさと真実。
すべてすべて、子供時代の自分は、手のひらに持っていたはずだ。
固く握り締めていたはずだった。
だけど、前より少しだけ大きくなった手のひらには、正直、何も残っていない。
私は大人の国に来たのだと思う。
今度はこの世界で、うまくやっていく術を学ばなければならないのだと思う。
出会ってきた人たち、すべての背中を、しっかりと見習いながら、私は私の道を歩いていく。
――残酷な世界。
その景色の中を、できれば爽やかに歩いていきたいと思う。