神のパシリ 13

ディナー  2009-10-25投稿
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「…主よ、何か知っているようで。そして…隠しているようで…」

ゼルの口元が怪訝に歪んだが、死の神はまるで気にする様子もない。

「そなたが知ったところで、どうなるものでもないわ」

「では、教えて頂けるので?」

「必要ない」

死の神は少し欝陶しい感じで返す。

「…して、今はいずこにおる?」

「…わかりません。雨音がします。俺に関与した女から聞きましょう」

「…よかろ。ゼル、詮索はそなたのためにはならんぞ。そなたはわらわの命を果たせばよい」

「…検討しておきます」

まるで先程とは違う、小間使いとしての粗末な扱いだ。

「よいか、ロロでわらわが下知を果たせ」

ぶっきらぼうに、通信は終わった。

嘆息するゼルに、背後から声がかかる。

「…気付いたんだ…よかった…」

振り返ると、寝ぼけ眼の少女が、毛布を払いベッドに腰かけている。

「聞きたい事がある」

「…?」

「ここはどこだ」

「雨の街、ロロだよ」

奇遇なのか、運命なのか。ゼルは期せずしてロロにたどり着いていたのだ。

なるほど、雨の音にも、カビ臭さにも納得がいく。
「それより、身体は大丈夫なの?」

「問題ない。俺は普通の人間とは違う」

少女は、穴が開いたゼルの衣服から見える完治した体に、驚きを見せる。

「すごい…。心配したよフェルゼル兄…あれじゃ死んだっておかし…」

「待て。俺はフェルゼルという名前ではない」

「…えっ?」

「俺はゼル。追われながら旅をしている、現世の隠者だ」

それが、ゼルの人間世界での存在口実なのだ。

「…でも…その顔…それにその…」

少女は恥じらいを持った表情で、ゼルの瞳をのぞき見る。

「その赤いキレイな瞳…フェルゼル兄以外で見た事ないよ…」

「…違うと言っている。第一、俺はお前を知らない」

少女の表情は、軽い落胆に変わった。

「…みたいだね。私のコト、本当に知らない感じだもん…」

少女はいじらしい表情で、濡れた視線をゼルへ向けている。

「…聞いて欲しそうだな、フェルゼルが誰なのか」

少女は、呟くように言った。

「私の……血の繋がらない兄さんだよ」



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