エリン達はまだ術にかかっているが、動いて攻撃はしなくなった。
ひたすら涙を流して…。
「モウ秀明ハ死ンダ。私一人デオ前達ヲ倒ス事ハ出来ル…。私ノ 力 ヲ見セテヤル…!!」
突風と共に火炎が舞い上がる。
「死神…秀明はホントに…。」
「もう、命の糸は切れた…。」
愕然と肩を落とし、怒りに満ちた表情をあらわにする…。
「もう消しちまおう!!どうしようもないぜ!!」
ライアンも妖力を高め戦闘体制に入る。
僕は…
このやるせない気持ちを何処にぶつけたらいいかわからなくなった…。
たとえ消えてしまったとしても、奈々の家族…。
たとえ悪魔の心でも、奈々の父親…。
少しでも望みがあるなら、僕は戦いたくない。
「ハーン!何迷ってんだよ!」
「やめよう…もう…こんなの…。」
炎の中、僕はキマイラを見て呟く。
「何言ってんだよ!!体乗っ取られるぞ!!」
死神は僕の尻を叩く。
「今やらなきゃ、お前はアイツに妖力を取られるんだぞ…。今やらなきゃ…。」
あの時の鬼のような表情。本気で怒ってる。
「あんなでも…奈々の親父だぜ…。秀明もいなくなって、奈々は…。」
僕は何故か涙が溢れて止まらない。
ヤツを消す…。
奈々の父親を消す事が怖くなった。
「カスハ…カスダナ…。ソノママヤラレレバイイ…。」
炎は更に強くなる。
「アイツはもう奈々の親父じゃねぇ!!余計な事考えるなよ!!」
ライアンの姿は炎に包まれて見えない。
「ハーン…やるしかない。」
そう言い残し、キマイラに立ち向かう死神。
「お…俺は…。」
(俺は…守らなきゃならない…。エリンを…。みんなを…。)
また…熱いものが込み上げてきた。
気が付くと、死神もライアンもやられてる。
「ハ…ン…。早く…。」
素早くキマイラはエリン達の所へ行き、睨み合う。
「ペンドラゴン ノ チカラヲ 私ニ………。」
キマイラはエリンの足に噛み付き、妖力を吸い取る…。
このままだと、キマイラの思うツボ…。
とっさにキマイラの腹を噛み引き離そうとした。
(エリン…頼むから動いてくれ…。)
奇声を上げ、エリンがキマイラを踏み付ける。
だが、もう遅い…。
キマイラの力が最大に近くなる…。