荒々しい太陽が西の空に傾き、小さな町の公園にも夏の一日が終わりを告げようとしている。
東の空には一番星が瞬き始め、辺りは行き交うボールを目視するのが困難に成りつつあるが、幼い兄弟は野球を止めようとはしない。
兄の放ったボールは鋭い軌跡を描き、弟のもとへと直進していく。ろくすっぽボールが見えない薄暮の中、弟は卓越した野球センスでそれを弾き返した。
小さな公園のフェンスを楽々と越えてゆく打球を見つめながら悔しがる兄に、跳びはねながら手書きのベースを回る弟。
兄は弟の野球センスを慈しみ、弟は兄の才能を敬っていた。
ボールが完全に見えなくなり、ようやく二人は家路についた。
その途中、弟が兄に語りかける。いつの日か二人で甲子園のグランドに立とうと。弟思いの兄は、優しくそれに頷いた。
そして、十年の月日が過ぎてゆく。