知ってるよ。?

やまだ  2006-08-07投稿
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知ってるよ。

あなたは、あたしのためを思ってうそついてくれてるんだよね。

でも、あなた知らないでしょ。
あなたのうそは、あたしじゃない誰かのためだってこと。



――…?…――

昨日は、家に帰ってからずっと泣いていた。


泣き付かれて、いつの間にか寝てしまっていたようだ。



『……朝…だ…。』



いつもなら、早く鈴木くんに会いたい気持ちでいっぱいなのに


『あいたくない…。』


わかってる。


鈴木くんが、『美味しかった』って言ってくれること。

食べてもいないカップケーキの味を教えてくれること。


笑って、ありがとう、と言ってくれること。



ぜんぶがあたしのためだったらいいのに。


それはあたしのためじゃない。
泉先輩をかばうため。


のりちゃんに言ったら、ひねくれた考え方するな、って思われるだろうなぁ。


『…でも、そうなんだよ。』


あたしのためじゃない。


『そんな嘘、ついてほしくないなぁ…』


あたしは腫れた眼を冷やしてから

おもむろに制服に着替え、いつもの道をゆっくりゆっくり歩いた。




いっぱいいっぱいになりそうなあたしは、
溜め息をついた。


と同時に、鈴木くんの声がした。


『おはよ。』



あたしは振り返らずに『おはよう。』と答えた。


ねぇどうしよう。
泣きそうなの。

だって わかっちゃうから

あなたが次に なんて言うのか。


『き、昨日のさ…』


『泉先輩から聞いたよ!』


鈴木くんの声をさえぎって、あたしは明るい声を出した。


『あ、あたしのカップケーキ、美味しかったって言ってくれたの!鈴木くんに申し訳ないけど、食べてよかったぁなんて言ってて…笑っちゃった!』



なにべらべら喋ってんだろ。


『ごめん…。』


謝るくらいなら
今すぐ笑って欲しかった。


あたしは

鈴木くんのために嘘をついてる。

鈴木くんは、誰のために嘘をつこうとしたの?

ほんとはあたしのため?


馬鹿みたいな問掛けを自分にしたけれど
あたしはすぐに自分に答えてあげた。



―違うよ。―



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