知ってるよ。?

やまだ  2006-08-07投稿
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知ってるよ。

あたしがあなたに出来ることなんて限られてる。


でも、あなた知らないでしょ。

あなたなら あたしを笑顔にすることも悲しくさせることも
いとも簡単に出来ちゃうこと。


――…?…――


あっという間に放課後になった。


ゆうたに抱き締められたことはびっくりしたけど
いつものようにからかわれたのだと解釈すれば、なんてことはなかった。


『―…泉先輩、今日は朝練でよかった。』


昨日に続いて、今日も朝練だったらしく
いつもの曲がり角に泉先輩はいなかった。



あたしは複雑だった。
いたらいたで気まずかったし、先輩がいないせいで、鈴木くんとの会話がぎこちなくなってしまった。


『ひどいなぁ。』


泉先輩は悪くないのに、あたしは小さく頬を膨らませた。


その時、後ろで泉先輩の声がした。


『ヤス君!ほら部活行くよ!』


…ヤス君…って…。


『今行く。』


大野ヤス先輩。


泉先輩が、好きなひと。


野球部のキャプテン。


『もーっ!早くしなさいよ!』
『そう怒るなって。綺麗な顔が崩れてるぞ。』

『バカッ!』


泉先輩たちがこっちに来る!


隠れる必要はなかったのかもしれないけど、あたしはとっさに教室に入った。


先輩達の声が遠くなる。


『………行ったかな…?』



廊下を見渡してホッとしたあたしは後ろを振り替えってまたびっくりした。



『あれ?沢木…?』
『鈴木くん!』


びっくりした拍子に、あたしは前につんのめってしまい、鈴木くんにもたれかかるように倒れた。


『ごッごめんなさいッ!』
『…沢木はほんとにおもしろいな。』


鈴木くんは、あたしを支えながら立ち上がって

もう一度あたしを

抱き締めた。


『…すッ…すす鈴木くッ…』
『ごめん。ちょっと情けないとこ見せる。』

鈴木くんの声が震えてる。



廊下に泉先輩とヤス先輩がいたことを、鈴木くんは知ってたんだ。


言われなくてもわかるよ。
痛いくらいに わかっちゃうよ。


あたしは、大好きなひとに抱き締められているのに

悲しくて悲しくて仕方なかった。



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